2014年4月28日星期一

逆流性食道炎の治療に使用される薬の作用と副作用

逆流性食道炎の治療には、様々な薬剤が使用されます。胃酸の分泌を抑制したり中和するもの、胃の粘膜を保護するもの、消化管の運動を促進するものなどを使用します。これらには、副作用があり注意する必要があります。


逆流性食道炎は、胃から胃酸が逆流することによって、胸焼けや呑酸(苦味を伴うすっぱい味覚)といった定型的な症状が現れます。


そのため、胃酸の分泌を抑えて症状を軽減させる必要があります。

胃酸というのは、摂食刺激が脳に伝わると、胃の中にある壁細胞が刺激され、壁細胞から分泌されます。その壁細胞からの胃酸の分泌を阻害するのが酸分泌抑制剤です。酸分泌抑制剤には、様々なものがありますが、一番強力に胃酸の分泌を抑えてくれるのが、プロトンポンプ阻害薬であり、よく使用されます。

酸分泌抑制剤を使用し、一度胸焼けや呑酸の症状がなくなっても、服用を中止することにより、高い再発率を示すので、保険適応上も維持療法が認められています。再発再燃を繰り返すので、8週間通常量の酸分泌抑制剤を服用し、内視鏡検査で治癒を確認した後も、維持療法として酸分泌抑制剤を継続(半量など)するのが通常とされています。効果が不十分な場合は、増量が可能であり、必要に応じで継続投与ができます。維持療法の中止時期に関しては、判断が難しく、十分なエビデンスはないのが現状です。また、1日1回の服用で済むので、服薬コンプライアンスが良いのも特徴です。副作用としては、頭痛やめまい、肝酵素の上昇などがあります。それほど高頻度に出現するものではありません。


胃酸分泌を抑制はできないですが、胃酸を胃の中で中和させて、症状を緩和させるものもあります。


マグネシウム製剤や炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カルシウム、アルミニウム製剤などであり、制酸剤と呼ばれています。即効性があり、急性期に短期間使用されることが多いです。アルミニウム製剤は制酸力は弱いですが、粘膜保護作用などがあります。また、アルミゲルと水酸化マグネシウムの配合剤は即効性が高く、逆流性食道炎にも使用されますが、胃炎や消化管出血などにも使用されています。副作用としては、長期投与による高マグネシウム血症やアルミニウム脳症などに注意が必要です。


食道内で、びらんや潰瘍となっているところに広く付着して、粘膜を保護する粘膜保護剤も使用されます。


組織を修復し、結合組織の合成を促進しますが、その詳しい作用機序は明らかになっていません。粘膜保護剤で体表的なスクラルファートは、潰瘍局所に結合して、胃壁や病巣を保護し、潰瘍の治癒を促進します。また、潰瘍再発防止には、酸分泌抑制剤よりも優れているという報告もあります。しかし、スクラルファートは、アルミニウム製剤なので、他剤との相互作用やアルミニウム脳症などに注意が必要になります。

胃の運動を促進させ、食べたものが胃から腸へ送り出すのを助ける、消化管運動促進剤も使用されます。胃の運動が促進されることで、吐き気や胸焼けなどの症状が改善されます。消化管運動促進剤は、神経終末からの神経伝達物質のひとつであるアセチルコリンの遊離を促進することで、副交感神経を刺激し、消化管運動を促進すると考えられています。これらの作用を持つ従来の製剤は、消化管だけではなく、その他の臓器にも影響を及ぼす可能性があり問題となっていました(海外では、心室性の不整脈や失神などの重篤な副作用が報告されています)。そして、この問題を解決したのが、モサプリドクエン酸塩水和物という製剤です。消化管へ選択的に働き、今まで問題となっていた、他の臓器への影響がかなり軽減されました。もちろん、副作用がなくなったわけではないので、副作用には注意が必要です。重要な副作用としては、肝障害や下痢・軟便などがあります。また、モサプリドクエン酸塩水和物は、バリウム注腸X線造影検査前処置の補助剤としても使用されるようになりました。



逆流性食道炎の治療に使用される薬の作用と副作用

2014年4月27日星期日

逆流性食道炎で辛いこととは何か

逆流性食道炎の特徴的な症状は酸っぱい物質の口内への逆流と胸やけです。

逆流性食道炎は無症状か自分で管理している人が多く、重度の合併症になるまで受診しません。しかし、重度であれば長期的な服薬、そして手術にまで及び、辛い日常生活を送ることも考えられます。


逆流性食道炎(refulux esophagitis;RE)は昨今欧米では胃・食道逆流症(gestro-esophageal reflux disease;GERD)の名称が用いられ、わが国でも流布しつつあります。

食道炎・食道潰瘍の原因は、外因的な要因として、感染、化学的・物理的な刺激、逆流等によるものと、内因的な要因では加齢、膠原病その他があります。食道炎と食道びらん・食道潰瘍は病因が共通であることが多いです。この中で代表的な疾患が逆流性食道炎であり、これは胃酸、ペプシン等が食道内に逆流し、食道粘膜と接触することにより炎症、びらん・潰瘍が惹起される疾患です。

一定集団を対象にした研究では、胸やけや逆流症状は15%もの人が週に1回以上、または7%の人が毎日自覚していました。

臨床像としては、酸っぱい物質の口内への逆流と胸やけは、胃食道逆流症に特有な症状です。咽頭、喉頭、気管気管支への逆流により、慢性咳嗽、気管支収縮、咽頭炎、喉頭炎、気管支炎、肺炎などが起こります。早朝の嗄声を認めることもあります。肺への誤嚥を繰り返すと、誤嚥性肺炎、肺線維症、慢性喘息、等が起きます。胸やけは、過敏または潰瘍化した食道粘膜に逆流した物質が接触することで生じます。狭心症様または非特異的な胸痛を生じる人がいる一方で、胸やけも胸痛もない人もいます。持続性の嚥下障害は消化性狭搾の進行を示唆します。消化性狭搾の人のほとんどは、嚥下障害の前に胸やけが数年間続いています。しかし、3分の1の人では嚥下困難が最初の症状です。急速に進行する嚥下障害と体重減少は、バレット食道での腺癌の発生を示していることもあります。胃食道逆流症の患者の多くは無症状か自分で管理しており、重度の合併症が起きるまで受診しません。非常に辛い症状ではありますが、治療も可能です。

治療の最終目標は、症状を軽減し、食道炎を治療させ、合併症を予防することです。軽度の症例の管理としては、体重を減らすこと、ベッドの頭の部分をブロックで約10~15cm高くして寝かせること、腹圧を増加させる要因を取り除くことなどがあります。患者は喫煙させてはいけません。また高脂肪食、コーヒー、チョコレート、アルコール、ミント、オレンジジュース、ある種の薬物(抗コリン薬、カルシウム拮抗薬、平滑筋弛緩薬など)を摂取しないようにしなければなりません。また、大量の飲み物と食事を一緒に摂るのも避けなければなりません。軽度の症例ではライフ・スタイルの変更と市販の酸分泌抑制薬で十分です。

中等度の症例では、H2受容体拮抗薬を投与すれば症状軽減に効果があります。プロトンポンプ阻害薬は、症状軽減により効果があり、一般的に用いられています。

プロトンポンプ阻害薬はいずれも効果的であり、適切に8週間投与で最大90%の患者で食道炎を治療することができます。朝食前に15~30分に内服し、期限なく維持投与することができます。難治性患者の場合は用量を2倍にし、1日2回食前に投与します。副作用はごくわずかです。積極的な酸分泌抑制により高ガストリン血症が起きますが、カルチノイド腫瘍やガストリノーマのリスクが増加することはありません。ビタミンB12の吸収はこの治療により阻害されます。食道炎を合併したバレット食道患者においても同様に治療しなければなりません。しかし、酸分泌抑制によってバレット食道が治療されたり癌が予防されたりすることはありません。消化性狭搾のある患者では逆流の治療を積極的に行います。出血や狭搾の合併あるいは癌の発生が疑われる患者には食道鏡検査を行うべきです。逆流防止手術は長期に高用量のプロトンポンプ阻害薬を要する患者に対して考慮すべきです。



逆流性食道炎で辛いこととは何か